野球部物語④。

(前回から続く)1999年の5月、生徒会活動に精を出し、夏休みの文化祭への準備が本格化し、一方で部活では夏の大会に向けて緊張感が高まっていくなかで、僕はそれらの両立を断念し、部活を辞めた。僕が辞めた1週間後に友人のS君が退部し、残った同期の6人はそのまま3年の夏の大会で引退した。ギリギリのタイミングだった。

まずは主将にその旨を申し出た。淡々と了承してくれた。そして顧問と監督にも会って話をした。ギリギリまで気持ちは揺れ動いていたにもかかわらず、僕はこの状況ではどうしても辞めるしかない、という論調で話をした。無理にでもそうやって自分のなかに区切りをつけなければ、前には進めないと思ったからであろう。

区切りという意味では、ひとつの象徴的な場面をいまでも覚えている。辞めることを周りに告げる3日ほど前だったか、練習でノックを受けていた。当時は主将のバックアップとしてレフトに入ることが多かった。ハーフライナーの打球が飛んできて、ツーバウンドほどしたか、僕は勢いをつけながら前に突っ込んで捕球すると、バックホームを返した。普段肩が弱く、山なりになりがちな僕の返球は、この時ばかりは、イチローばりに糸を引く、捕手へのストライク返球となった。自分でもびっくりするような送球になり、周りかナイスプレーと声がかかった瞬間、野球はこれでいいかな、という感情がストンと空から降りてきた。(まだまだ続く)