マスカット。

少し標高の高いエリアに足を運んだ。首都圏は早くも真夏の様相を呈しているのだが、ここまでくるとさすがに過ごしやすい。

時間があったので、道路沿いで果物や野菜を売る店に入ってみる。吹きさらしの露店のようなつくりで、昔の八百屋のように果物や野菜が並べられている。あまりに開放的なので、どこからか虫が入り込んで飛んでいるくらいだ。

ひとしきり品物を眺めて、マスカットを手に取る。東京では目にすることのない立派なものだ。房が縦に30センチくらい長く伸びていて、上から下までびっしりとさまざまな大きさの実がはちきれんばかりについている。

個性が強すぎる房で、たぶん街中の果物屋では売りものにならないので、こうしてこの店に並べられているのだろう。もしかしたら出荷されること自体なかったのかもしれない。そう思うと、なんだか買って持って帰りたくなった。

結局はそのあとのアポイントもあったので、泣く泣く断念したのだが、あのマスカットはちゃんと誰かに買われて美味しく食べられたのか、気になる。