空き家。

実家に帰ると、必ず一階の仏間に座るようにしている。もともとはおばあちゃんの部屋である。そこには仏壇が鎮座して、おばあちゃんとおじいちゃんそれぞれの遺影がある。正座をしてひとしきり心を落ち着けて過ごす。別になにか報告をするわけでもないし、当然願掛けをするわけでもない。

2部屋の和室は片付けられてはいるものの、そのままに残っている。田舎の家でもないので、ある種贅沢な使い方ではある。もう隣三軒の家も空き家になってしまっている。

家は密集しているけれども人の気配は少ない。もう街中でも、このような場所は珍しくないのだろう。本来であればスクラップビルドされてもおかしくないものが、そのままに放置されている。それはまるでかつての主が魂だけ残して暮らしているかのようなものだ。

この家を更地に戻すのはいつだろうか。おそらく時が経てば僕が決断することになるのだろう。どうするのが良いのか、今度実家を訪れる機会には聞いてみようと思う。