若社長。

昨年知己になった大阪の若社長を目の前にして、僕はなじみのフグ屋にいた。人懐っこい童顔の社長が、息つく暇もなく話を続けてくる。僕はフグのアラを鍋に沈めながらあいづちをうつ。

御多分にもれず彼の業界もシュリンクが続いている。幸いにしてたいていの会社には、バブル期に積み重ねた貯蓄があるが、大なり小なりそれを食いつぶしつつある毎日だ。バブル期の貯蓄がない会社が早々に潰れてしまったがために、ある意味では残存者利益を享受しているとも言えるが、それは束の間の気休めでしかない。

彼は20代半ばにして父親を亡くし、そこからは現会長である母親と二人三脚で会社を続けてきた。悔しい思いもたくさんしただろう、僕と会うときはいつも堰を切ったように話続ける。

事業承継のこと、業界に残る既得権益、人手不足、メインバンクのレベル低下、積もる話は尽きない。仕事を抜きにして、彼を手伝えることはないか、考えてしまう自分がいる。

いつものごとく早めのお開きで、新大阪駅へ。環状線に乗り込んで、つり革につかまりながら最後の時間の名残を惜しむ。この不思議な関係はたぶんこれからも続いていく。