儚い夢。

びっしりと詰まったアポイントの間、ふとバスに乗り込むと、気が抜けてしまった。大きく口を開けたまま、うつろな目で中空を見つめる。フロントガラスの向こうに、日差しに照らされた昼下がりの街がぼんやりと見える。

今週は気合いを入れて昼も夜も予定を入れてしまったがために、疲れるスケジュールになってしまった。おまけに昨夜はベッドに入ってからも手足がむずむずしてなかなか眠れなかった。

うつろな目で中空を見つめながら、そういえば昔どこかで誰かが同じような表情をしていたな、と記憶の糸をたぐる。銀行時代の上司の顔が浮かんだ。土気色の顔をして、濃い疲労感をにじませた表情だ。あるいは彼も、精神を病む一歩手前にあったのかもしれない。気がつけば、当時の彼の年齢まであと5歳くらいにまで近づいている。芋づる式に、懐かしいいろんな名前が浮かんでは消える。

ぼんやりすること数分、ふと気を取り直してギアを入れ替える。この数分間、夢を見ていたようだ。儚い夢だった。