濃霧。

久しぶりに北西方面へ。車窓から見える首都圏郊外の街でも桜が開花し始めていて、着実に春が進んでいることが感じられた。しかし新幹線を降りて車で山あいに入っていくと、未だチラホラと雪が残っている。

行く前には意識もしていなかったのだが、目的地の近くでとある風景を見て、一気に記憶が甦ってきた。10数年前に自分自身がこの場所に来たことがあることに気づいた。

もう時効なので書くけれども、10数年前、その場所にいた僕は、とある女の子に告白をしたのだ。ロッカーに置き手紙をおいた。しんしんと雪が降り積もる夕方に、外で待っていると、とぼとぼとその子が歩いてくる姿が見えてきた。そのあとのことはあまり覚えていない。と言うか、忘れたことにしておきたい。

道すがら、途中から濃い霧に包まれてきた。まるでドラえもんに出てくる「どこでもドア」の亜種「どこでもガス」のようだ。もし今10数年前にタイムスリップすれば、あの頃の自分になんと言うだろうか。