三石。

ひょんなことから鉱山のまちを訪れることになった。

とある県境、緑の深い山あいの景色のなかに突然、茶色い土がむき出しになった小さな山と、それにへばりつくようにしてびっしりと建てられたねずみ色のバラックが現れた。とある鉱石(便器の材料にも使われている非常に身近なものである)が今もなお露天と坑道で掘られているという日本でも珍しいところである。

バラックの下に坑道の入り口があるそうだ。坑道内の気温は年中17度で、湿度もほぼ一定に保たれているという。今回は入る機会がなかったが、いつか入ってみたい。なんにせよワクワクする場所だ。

まちの雰囲気は昭和そのものである。くすんだ色の建物、昔から変わらず掛けられているであろう看板、若い人も見かけない。鉱山としてはまだまだ役目を終えていないのだが、この先誰がこのまちで生きていくのだろうかと心配になるようなほどに、時が止まっている。

鉱山といえばいくつかのジブリの作品を思い出す。商業地や住宅街、工業地帯とも違うあの独特の雰囲気は、やはり鉱業という産業の特性から醸し出されるものだろうか。突如異世界に迷い込んだような気にさせられるこのまちに、心惹かれる人がもっと増えればよいなと思う。