挫折の記憶②。

(昨日の続き)試験の合格発表で僕の番号だけが呼ばれなかった場面のことは今でも鮮明に思い出すことができる。当たり前のように合格の通知をもらって教室を去っていく他の若者のなかで、僕だけが動けなかった。たぶん、生まれて初めて大きな屈辱を覚えた瞬間だったのだと思う。

再試験の前の夜はあまり眠れなかった。試験のコースを思い浮かべ、どのタイミングでクラッチを入れ替えてアクセルとブレーキを踏むのか、何度も頭のなかでシミュレートしていた。1度目の試験の前にはそんなことは一度たりともしなかった。

再試験は上々であった。それでも結果発表の瞬間はひどく緊張した。番号が呼ばれて、安堵の大きなため息をついた。窓の外にはヒマワリが咲いていたことを覚えている。

成功した記憶よりも、失敗して挫折した記憶のほうが後になって役に立つ。挫折は恥ずかしければ恥ずかしいもののほうが役に立つ。そんなことを思い起こさせる交差点だった。

他の思い出したくない挫折も、思い出せるくらいになればまた、取り出してみようと思う。