桜の木の下

仕事のなかで、たびたびサポートしてもらう外部の司法書士の人と雑談をしていた。彼は仕事を続けながら、司法書士の試験に合格するという長年の夢を去年叶えたのだ。

「数年ぶりに、今年の桜は清々しい気持ちで見ることができます。去年まではどうしても散ることを想像してしまうと良くないので、遠ざけていました。」

誰もが桜を見て清々しい気分になるわけではない。晴れ晴れとした気持ちで入学や入社を迎える人がいる一方で、浪人が決まった人や卒業したものの就職が決まらなかった人、不本意な進路を選んだ人はどんな気持ちで桜の季節を迎えただろうか。

でも、そのような忸怩たる思いや、忍耐の時期を経たからこそ、それを乗り越えた後に見る桜は素晴らしいものになるのだろう。つらい思いで桜を見たり、桜を見ること自体を避けたような記憶は、きっとその後の人生にとって役に立つのだろう。

そんなことを思いながら、散り始めた夜の桜を見る。