野球部物語⑥。

(前回から続く)夏の文化祭、秋の音祭と季節は過ぎていった。生徒会の役員にもなり、時には帰りが終電になるほど、脇目もふらずに力を注いだ。現時点で、人生で1番頑張った1年は、と訊かれると答えは高2の1年間と言うことになるのだと思う。

どれだけ頑張ったところで、『野球から逃げた』事実は変わらないのだけど、ひとつだけ救われたことがあるとすると、秋の音祭が終わって、野球部の先輩たちに「ありがとう、楽しい高校生活を送れたよ」と言ってもらえたことだ。部活の頃には想像もつかないような柔和な表情が忘れられない。どの選択肢が正解、などということはないけれども、ひとつの答えを出してもらえたような、そんな気分になれた。いつしか、野球部を辞めた人間なんだ、という引け目は消えていった。

冬の一大行事でもある百キロ徒歩も無事終えて、僕の高2の1年間は終わった。役員任期も終え、解放感に溢れた春休みを送るなかで、野球部に残った同期たちは、壮絶な猛練習に取り組んでいた。(続く、明日でおそらく終わり)