野球部物語⑤。

(前回より続く)辞めたあとはふっきれたかのように生徒会活動に取り組んだ。はっきり言って部活を辞めたのは周りからは逃げと捉えられてもしょうがない。だからこそ、中途半端で終わらせてはいけないと思い注力した。

部活の仲間は、僕の決断を表面的には概ね理解してくれた。U先輩もI君も、寂しがってくれたが、引き続き生徒会活動にも顔を出してくれた(その2人は結局最後まで部活を辞めなかった)。

一度だけ、恥ずかしいことをした。辞めてから1カ月ほどしてからだろうか、休み時間にトイレに入ろうとすると、主将が用を足していた。僕はとっさに気まずさを感じ、用を足さずに引き返そうとすると、彼は「なに避けてんだよ!」と声を荒げた。その後自分がどんな顔をしてその場を去ったのかはもう思い出せない。主将は厳しい人だった。最後の夏の大会前はずっと険しい表情をしていた。

そんなこともあって、より一層恥ずかしい姿は見せられない、という気持ちが強くなった。7月、S君と2人でこっそりと、夏の大会を見に行った。朝から帰り道まで、2人ともほとんど無言だった。(続く)