盲腸線。

やぼ用があって西武多摩川線に乗る。中央線の武蔵境駅の脇にある小さなホームに電車は停まっている。終始ざわざわとしている中央線を尻目にこちらはひっそりと発車する。

特筆すべきこともない住宅街をゆるゆると走って10分少々で終点の是政駅に到達する。まぶしい日差しはまるで夏のようで、自分の影がくっきりと道路に映る。思わずジャケットを脱ぎたくなる。

改札を抜けて左手に出るとすぐに多摩川を渡る大きな橋に出る。橋を渡ればすぐに南武線南多摩駅だ。ここまで線路を延ばせば中央線と南武線の短絡ルートになっていただろうにもったいない。西武グループの大株主であるサーベラスが、多摩川線の廃止を提言して物議を醸していたが、逆に延伸を提言していれば、反響は大きかったに違いない。

そんな騒動などなかったかのように、是政橋から見る多摩川の景色はのどかで、河川敷には野球少年の声が響いている。空には雲が浮かんでいる。「濃い白」という表現がもしあるのならば、ぴったりの雲が浮かんでいる。