逆境。

プロ野球が開幕して1カ月。ご贔屓マリーンズが首位争いに絡むのも意外ではあったものの、一番驚いたのは、開幕前からゴタゴタ続きだったジャイアンツも首位争いをしているということだ。その立役者は間違いなく高橋由伸監督だと思う。

野球賭博の一件から、なかば強引な形で現役引退にもちこまれ、準備期間もなく監督に就任。春季キャンプが終わってからも、新たに高木投手が賭博に関わっていたことが判明し、さらには開幕戦で始球式を務めたバトミントンの選手までもがその後賭博に関わっていたことが明るみになるというオチまでついた。不憫すぎて仕方がない。

戦力面でも昨年チーム勝ち頭のマイコラス、要の阿部慎之助を欠き、長年チームを支えてきた内海哲也の調子もいっこうに上がらない。そんななかで、この位置をキープしているのは手放しで称賛されるべきことだと思う。

実際、高橋監督の采配を疑問視する声は一切聞かれない。選手の力を見極めつつも、選手の力を信頼してむやみにオーダーをいじることがない。調子が出なくても我慢して使い続けているのが良い効果をもたらしている。もう何年も監督をしているかのように、落ち着いている。

不安定な状況や逆境にありながら、表向きにはそれを出さずに飄々と結果を出す。高橋由伸という人間の真骨頂がいま発揮されているのだと思う。