僕たちの開幕戦。

プロ野球開幕である。

開幕戦はできる限り予定を調整してリアルタイムで見るようにしている。久しぶりに好きなチームの野球を見られるという喜びもさることながら、スタジアムに溢れる開幕戦独特の張り詰めた空気を感じるのがたまらなく好きなのだ。選手も、スタッフも、アンパイアも、ファンも、冬の間に溜め込んだ万感の思いを吐き出すがごとく、密度の濃い緊張感に包まれている。その緊張感が、身体を動かす時にうまくプラスに転化したり、あるいは身体と精神のバランスが合わずにミスが出てしまったり、その悲喜こもごもを見ていると、さまざまに感じることがある。

開幕戦はシーズン144試合のなかの1試合に過ぎない、と言われることもあるが、けしてそのようなことはない。自らの、チームの積み重ねていく第一歩をどのような形で踏み出すか、ということは、その後歩みを進めていくにあたっての勢い、モメンタムに強く影響する。モメンタムのみならず、最初の1本のヒットが出るまで、最初の1球の守備機会を無事に終えるまでは、シーズンが始まった気がしないと言われる。フィールド上で試合に参加していようとも、自分自身がひとつ確かな実績を残した、貢献をしたという実感を持てなければ、自分自身がチームの一員として動いている、という状態にならず、どこか疎外感や孤独感がつきまとってしまうのだ。

そういった言いようのない不安を、選手たちはそれぞれの方法で打ち破っていく。既に実績のある選手やベテラン選手は、これまでに培ってきた経験をもとに、開幕戦であろうと平常心を保ってプレーしていく。調子の良さを評価されて起用された若手選手やルーキーは、勢いのままに無心でぶつかっていくことで、緊張感を乗り越えようとする。またとある選手は自分が積み重ねてきた練習を自信に変えて、壁を突破しようとする。そうやって、それぞれの早い遅いはあれ、それぞれの選手が自分のシーズンをスタートしていく。

開幕ということで言えば、きょう3月31日から実質的には新年度入りである。新しい環境に移ればなおのこと、たとえ新しい環境に移らなくとも、気分一新にまっさらなスタートを切ることになる。ここまで思うような成果が残せていなかったとしても、その流れをいったんリセットするまたとない機会になる。スタジアムでプレーする選手にうまく学んで、自分なりの方法で、良いスタートを切っていきたい。