箱根駅伝というお化けコンテンツ①

お正月の一大イベントとしてすっかり定着した箱根駅伝。年明け後のテレビ番組のなかでも圧倒的に高い視聴率を叩き出し、他局がまともに張り合わず、再放送などを流しておく有様となったお化けコンテンツである。僕もまた今年もしっかりと堪能させてもらった。

★★★

陸上競技界はおろか、スポーツ全体を見渡しても、箱根駅伝に並ぶコンテンツはなかなかない。これを越える盛り上がりをみせるのはワールドカップ日本戦かオリンピックの人気競技決勝くらいではなかろうか。プロ野球日本シリーズはややもすれば負けかねない。

箱根駅伝自体は、単なる関東の大学による大会である。大会の格だけで言えば、出雲駅伝(全日本大学選抜駅伝)、名古屋-伊勢間で行われる全日本大学駅伝よりも下になる。しかしながら、実質的にはこの2つの駅伝は箱根駅伝の前哨戦として位置づけられている感が否めない。これもまた、箱根駅伝のコンテンツとしての大きさゆえんであると思う。

ここまでコンテンツが育った要因としては、1月2日〜3日という日取りや、東京〜箱根間往復という特徴のあるコース設定もさることながら、番組制作を行う読売新聞社グループの力が最も大きいと考えている。

ラソンや駅伝となるとややもすればトップ争いに視点が集まりがちであるが、箱根駅伝の番組制作はそれ以外にも視聴者を惹きつけるコンテンツを多く用意している。代表的なものは過去のエピソードを語る『今昔物語』。草創期や戦後すぐの混乱期も交えて、箱根駅伝を走った選手と、その後の人生にもスポットライトが当てられる。単なるスポーツ中継としての意味を超えて、人生という道のりを描き出す名物コーナーである。他にも、タスキ渡しの場面は必ず全チームが中継され、力を使い果たした選手の姿が映し出される。首位チーム通過後一定時間が経過すると、前の区間の選手の到着を待つことなくスタートせざるを得なくなる、繰上げスタートの制度もあり、しばしタスキが途切れ、無人の中継所に到着し絶望に打ちひしがれる選手の姿が映し出される。同様に復路では、シード権(10位以内に入れば自動的に来年の箱根出場権を獲得する。他のチームは10月の予選会を勝ち抜く必要がある)争いも注目される。

そもそも、今挙げた予選会自体も、今回からはテレビ中継されるようになり、出場権をかけた悲喜こもごもがカメラで捉えられる。予選会のみならず、夏合宿をはじめとした一年間の各大学の練習自体も追いかけられ、時には密着取材がなされることもある。取り組みの過程を含めて、コンテンツとして仕立て上げられているのだ。(次回に続く)