FINAL、その行方。

電王戦が始まっている。FINALと銘打たれ、シリーズものの電王戦は今年で最後となる。第1局はプロ棋士側が序盤から揺さぶりをかけてそのまま押し切り勝ち、そして先週末の第2局はなんとプロ棋士側が角不成という奇抜な手を指したところ、コンピュータ側がその手を認識できず王手放置のバグを起こし、プロ棋士(人間)の連勝となった。

角不成という手にコンピュータが反応できないというバグをわざと突いて勝ったかのように思えるが、局面自体も既に勝ち筋に入っていた。対局者の永瀬六段はそのバグを知りながら、自分の勝ちがはっきりした場面であえて角不成を指したのであり、これは名実ともに完勝と言ってよい。一昨年昨年と苦渋を飲み続けてきたプロ棋士側が、今年はここまでコンピュータを圧倒している。

プロ棋士の強さが際立っていると言うよりも、コンピュータ側の弱点がさらけ出されていると言うべき状態に見える。ここまで負け続けたプロ棋士側が、ようやくここにきて追われる立場から追う立場となれて、ある意味では気楽な立場で相手を分析し戦略を立てられているという点が大きいのだと思う。また、この第2局のように、人間側がおおよそメリットのない手(ただし若干の例外はある)をわざと指した時にバグを起こしてしまったように、人間の行動を理解できずコンピュータがおかしな反応をしてしまうこともままあるのだろう。電王戦の闘いを通じて、人間と人工知能が弱点を指摘し合ってお互いを高めている、その実感がますます強くなっている。