奨励会、残酷な闘い。

きょうは何度かこのブログでも採り上げてきた奨励会の話。

半年にわたって18局を闘いぬく奨励会三段リーグが、来月に最終日を迎える。既に21歳の石井健太郎三段が最終日を待たず14勝2敗で四段昇段を決めた。もう一人の昇段者は果たして誰となるか。15歳高校一年生の増田康宏三段が、史上5番目の若さでプロデビューを果たす可能性も残されている。

奨励会を卒業し四段を迎える棋士の誕生が期待される一方で、別の形で卒業の危機を迎えている棋士たちのことが気にならずにはいられない。今回は、27歳の宮本広志三段と26歳の鈴木肇三段が退会の崖っぷちに立たされている。

奨励会三段の年齢制限は26歳(もしくは24歳以上で三段昇段した場合は最長5期まで)と定められている。ただし、26歳を過ぎた場合でも勝ち越しを続けていれば29歳の誕生日までは制限が延長されるという特例がある。逆に言えば、26歳を越えて負け越しの成績を残せば即退会ということになる。宮本三段、鈴木三段の最終日を前にした成績は共に7勝7敗。そして最終日の2局目は宮本ー鈴木戦が組まれている。勝ち越し延長にたどり着くには2連勝が絶対条件。ということは。。
2人が揃って来期のリーグ戦を迎えることはないということである。

宮本広志三段の実力は既に知れ渡っている。一昨年、四段と奨励会棋士で争われる加古川清流戦というトーナメントでプロ棋士を次々と破って決勝進出、船江恒平四段(現五段)との決勝三番勝負にも先勝し、タイトルまであと1勝で手が届くところまで登りつめた。他に、20代の若手棋士で争われる新人王戦でも軒並みいいところまで勝ち上がっている。当然ながら奨励会三段リーグでも好成績を残し、毎回昇段候補筆頭に挙げられていた。

しかしながら、プレッシャーに弱いのかいつもあと一歩のところで勝ち切れない。前期の最終局も、2局目に勝てば無条件で昇段というところを負け、3位次点という結果に終わった。その前にも2度4位で終わっていることもあり、見ているこちらもなんとも歯がゆい。そして今期は、前期の惜敗を引きずったのか出だし1勝3敗のスタートとなってしまった。

退会がかかる来週末の2局は、これまでのどんな闘いよりもプレッシャーのかかるものだろう。何とか普段の実力を出して、勝ち越し延長を掴みとってほしい。と言いたいところだが、後がないのは鈴木三段も同じ。勝つ者がいれば必ず負ける者も生まれてしまうのだ。勝負というものの残酷さを思い知らされる闘い。

だからこそ、見ている者も心動かされるのだが。