グリップ。

ビジネスの常識からすれば、グリップの甘い人と付き合うな、というのは当然である。何度同じことを言っても理解してもらえずに、「そこをなんとかなりません?」と粘る人、最初は調子のいいことをブチあげていたのにだんだん尻すぼみになり、しまいには連絡のつかなくなる人、「絶対に」という言葉を使う人、失敗しても懲りない人(それはそれで長所でもあるが)、往々にしてそのような人と付き合うと、結果的になにも生まれず徒労感だけが残ることが多い。

しかしながら、そのような人もまた何らかの仕事をして生きていることもまた事実なのである。そしてそのような人は組織のなかよりは独立して一匹狼で活動している人が多い。失敗や尻すぼみ案件ばかり繰り返して蓄えを食いつぶしているわけでもないだろうから、なにかしら仕事をやり遂げて生きていることは事実なのである。そして僕はその事実がわかっているからこそ、グリップが甘い人たちとも付き合ってしまうのである。彼らの案件が千三つでしか当たらないものであったとしても、今度こそその当たりが巡ってくるかもしれない、と儚い期待を捨てきれずにいるのだ。

捨ててしまえば楽なことにもいちいち首を突っ込んでしまうのは僕の性だと思う。仕事の世界に、遊びの余地を残しておきたい、遊ぶように仕事をしたい、という欲求があるから、そういうことをしてしまうのだと思う。良くない面があるのはわかっているのだがやめられないでいる。