家族。

昭和40年代の頃の映画を見ることが多い。高倉健さんが亡くなってから、彼が若い頃の作品をいくつか見て、その演技もさることなら時代の風景が垣間見えるのが面白い。自分が生まれる少し前の時代はすぐ昔のことに思えたが、映画に流れるそれはえらく今の時代とは違った空気をまとっている。

まず映画に出てくる男たちは概して荒っぽい。高倉健の役回りがしばしばそうであることもあるのだが、喧嘩っぱやく、そうでなくとも普段から気が短い。この頃と比べれば今の男たちは間違いなく草食系に見えるだろう。

ストーリーはもの悲しい。仕事は苦しそうだし、生活も全く楽ではない。住宅事情などもいまと比べるべくもない。人の命の価値もいまよりも軽く扱われているように感じる。それでも登場人物が湿っぽくならず前を向いて生きているのは、高度経済成長のなか、必ず明日は良くなるという希望をみなが持っていたからこそのように思う。

直近で見たのは山田洋次の「家族」。この作品もまたこの時代の空気感や生活がよく見えている。どんなに歴史を学んでも、この作品ほどにこの時代を感じることはできないだろう。作中では悲しいこともたくさん起こるけれども、意外なほどに軽やかにその悲しみを乗り越えていくあたりは、時代の勢いを感じるし、ある意味でこの時代の人の強さなのだと思う。