こだわり。

朝、会社に向かっていると、特徴的な歩き方をしている人がいた。右足と左足の踏み出す幅が違う。怪我をしていたり障がいがあるわけではなさそうだ。興味を持ったのでこっそり後をつけてみる。どうやら道に敷かれたタイルに沿って歩いているようだ。道には約30センチと60センチの2種類のタイルが交互に敷かれている。1つのタイルのなかに1歩を正確に納めようと、注意深く下を見ながら歩いている。前から歩いてくる人にぶつかるんではないかと気になるが、ステップの幅が違うのでカックンカックンとした特徴的な歩き方であるがゆえに前を歩く人もその人に気付きやすく、衝突には至らない。

こだわりがあって、その人はそのような歩き方をしているのだ。そう思うと僕はなぜか嬉しくなった。その人は、歩き方を人から無理に矯正されることなく(もっとも、正しい歩き方なんぞあるのか、という話でもある)、自分が心地よいと思った歩き方を貫くことができているのだ。そのことに僕は嬉しくなる。

自分がこだわる歩き方を貫くことで、その人はそこにどんな真理を見つけるだろうか。そこにある真理自体は、今すぐに役に立たなくとも、いつかどこかで世界を救うかもしれない。多様性を尊重するということは、そのようなことを指すのだと思う。