北国の街を歩く。脇には雪が寄せられ、わずかに残った歩道のスペースにも水たまりができている。アスファルトならば良いのだが、タイルのような路面だと革靴はたやすく滑ってしまう。滑らないように、足の裏を垂直に路面に下ろした、行進のような歩き方をしていると、水たまりに足を踏み入れた時に勢いよくしぶきが撥ねる。しぶきはタイミングよく足の甲のくつ下に落ち、くつ下に冷たい水が浸透していく感覚が足の周りから伝わってくる。
粉雪がちらついている。雨ではなく雪であれば、傘は必要ない。指したところで雪は横から下から身体にぶつかってくるからだ。ごくわずかに吹いている風を捉えて、粉雪が方向感なく空中を舞っている。
雪が降っているからには、街歩きもできないので、そそくさと喫茶店に入って、ナポリタンを注文する。ケチャップとタバスコの味は暴力的ではあるのだけど懐かしい。懐かしい味はきまって身体によくないものだったりするけども。
地方をフラフラして、時には喜びに胸が踊ったり、時にはガッカリして足取りが重くなったり、ミスをしたのではないかと気が気でなくなったり、そんなことばっかり繰り返している。ちょっと進んではまた後戻り、を繰り返してもうすぐ今年も終わる。