あの日。

夢のなかでゴゴゴと音がした。なんだろうと思う間もなく意識は現実に戻り、既に世界は大きく前後に揺れていた。ジェットコースターで頂点から一気に落ちる時のように、歯を食いしばって身体に力を入れる。どこかの家から悲鳴が聞こえてくる。僕の寝ていた布団の右隣には子ども用のタンスがそびえ立っていたが、タンスがすぐ側にあるから、もし倒れかかってきても死にはしないだろうととっさに考えた。それ以外のことを考える余裕はなかった。

ゆっくりと揺れは収まり、辺りはシーンと静まり返った。電灯が点かない。停電しているということだ。ラジオのスイッチを入れると、大阪震度5、京都震度6という報が入ってきた。震源は琵琶湖だろうか、などと僕は想像していた。ときに、神戸震度7という情報が入ってくるのは1時間ほど後のことである。幸いにして、その頃には電気も復旧した。

テレビのスイッチを入れると、三ノ宮駅前の光景が映し出された。寒空の下でおばあさんが毛布にくるまり、足元にはなにも敷かないで歩道に座り込んでいる。呆然としたおばあさんの顔が静止画のように映り続ける。小学校も休校になったので、午後からは町内を歩いてみた。ところどころ、バラックやよう壁が崩れ落ちていた。

きょうは、あの日から20年。