時代。

昨年仕事で最後に訪れたのは名古屋の郊外だった。年の瀬夕暮れの迫るなか、伊勢湾に面した現地に降り立つ。歩道には人気がないが、車道は買い物帰りの車で埋まっている。

名古屋駅からここまでやってくる間、もう目を通すべき書類もメールもないので、ぼーっと外を見ていた。首都圏や関西と違ってこの地域でローカルな交通機関を使うことがあまりないので、見える車窓が目新しい。

街の景色を見ていて、首都圏や関西と比べるとマンションが少ないことに気づいた。駅の周りにビルはあっても、駅を出るとほとんど高層の建物は見られなくなる。それゆえに、街全体が平べったい印象を受ける。これは、中京圏がクルマ社会であることや、一戸建てを良しとする文化があるからこそなのだと思う。

考えてみれば、首都圏や関西でも住宅すごろくの上がりは一戸建てだったはずだ。マンションが邪道でなくなり、逆にマンションにしかない価値が見出されるようになったのはバブル以降の短い期間でしかない。25年前にいまの豊洲や武蔵小杉などのマンションエリアの風景は予想だにしなかっただろう。ちょっとしたさじ加減の違いで、首都圏や関西の住宅事情は変化し、中京圏は変化しなかつまたのだ。

年月が経てばマーケットの方向や価値観は驚くほど柔軟に進化していく。その進化を追いかけていく面白さを感じながら、今年も仕事をしていこう。