階級。

出張や客先への直行でない日の朝は、横須賀線で会社に向かう。いつも電車に乗り込む駅は乗降客数に比べて自動改札機の数が全く足りておらず、ピーク時間帯にはいつも改札機を抜けるための行列が連なっている。

その日はどうやら隣の駅で急病人の救護が行われたらしく、ダイヤは大幅に乱れていた。ホームの端から端にまで乗降客があふれ、階段からホームに上がれなくなっている。改札機の前の行列の進行も極めて遅くなっていた。

どうにかこうにかホームに上がって、遅れてやってきた電車を一本やり過ごして次の電車に乗り込む。乗り込んで車両の端に進むと、さらに乗り込もうとする乗客から伝わってくる圧力に押され、とうとう僕は車両の連結部の上に乗ることになった。不安定でもあり空調も効かないが、ぎゅうぎゅうの状態よりはましだ。

そう思って電車の揺れに身を委ねていると、連結部向こうの扉が開いた。隣の車両はグリーン車だったのだ。どうやらあまりの混雑にグリーン車から乗り込んだ客が、アテンダントに普通車両に移るように言われたようだ。

立ち客もおらず整然とみなが座っているグリーン車と、連結部まで人でぎゅうぎゅうの普通車の間の扉が開きっぱなしになった。グリーン席に座って日経新聞を読むおじさんと目が合った。疲れた顔のアテンダントがやってきて、グリーン車から普通車両に移る客を押し込んで、扉を閉じた。21世紀の階級社会である。