ながさわたかひろ展。

クリスマスムード真っ只中のある日、神楽坂のアトリエに行ってきた。ながさわたかひろさんの『プロ野球ぬりえ2013〜新たなる希望』という個展である。

この人のことは、NumberWebの村瀬秀信さんの記事で知った。もとはイーグルス、2010年からはスワローズの選手の姿を描くことをライフワークにしている方だ。ライフワークと言っても、球団からギャラが出るわけではない。生活を犠牲にしながら、ファンとして、いや「選手」として、シーズンを共に戦っているのだ。

個展は、B5のサイズの紙に1試合の場面を詰め込んだ絵144枚+αがメインとなっている。絵のことは素人でなにもわからないけれど、選手の姿が力感あふれるタッチで描かれている。普段はパリーグの試合しか見ていない僕でも、絵を見ればあぁこんなことがあったよなと思い出す場面がいくつもある。テレビ越しであっても、スタジアムで直に観たものであっても、野球の試合には誰の脳裏にも同じく焼き付いて残る場面や選手のしぐさ(それが選手ごとのイメージに結びついていくのだが)があると僕は思っているのだが、ながさわさんはそれらひとつひとつを丁寧に拾って絵にしていると思う。それは野球に対する愛情があるからこそできる作業なのだと思う。

1時間ほどじっくりと絵を見せてもらいながら、ながさわさんと話をすることができた。しゃべり方は武骨である。しかしながら、ひとつひとつ言葉を頭の中で反すうしながら、野球と絵に対する思いについて話してくれた。確か10ほど歳は離れているのだったか、顔はベビーフェイスで僕と歳が変わらないのだが、スワローズのベースボールキャップからはみ出た髪にはかなり白いものも混じっている。村瀬さんが記事のなかで表現していたように、本当にながさわさんは人生を賭けて、選手として、選手となんら変わることなく、ヒーローインタビューで使われる言葉を借りれば、「チーム一丸」のなかの構成員として、4年間スワローズと一緒に戦ってきたのだなぁと感じさせられるものであった。

きょうは個展の最終日である。最後の最後にながさわさんが決意表明をするということで、Ustreamでその模様を見ていた。数日前と変わらず、ながさわさんは今シーズン、そしてこの個展の日々を反すうしながら、言葉を紡ぎだすという表現がぴったり合うような語り口で、最後に力強く、来年もスワローズとともに一年間戦うことを話してくれた。

だから僕も、来年もながさわさんの絵を楽しみにしているし、ながさわさんが頑張って(時には心が折れていることもあるだろうけど)いることをいつも頭の片隅に置きながら、自分は自分でやっていきたい。こんなに自分の人生と芸術が相互に交わる経験をしたのは初めてだ。

今シーズンお疲れさまでした。来シーズンも、ながさわ選手の活動に期待しています。