2014年のダウンタウン。

小学校高学年の頃からの数年間、日曜夜8時は至福の時間だった。その時間、父親はNHK大河を見ていたが、もう一台のテレビでは『ダウンタウンのごっつええ感じ』を見ていた。

『ごっつ』の笑いは、ロケ企画や大喜利ではストレートなものなのだが、ことコントになると、およそ日曜のゴールデンタイムにふさわしくないほどに、正統派からは一歩ズレている。あくまでカラッとした笑いなのだが、そこに貧しさや哀しさが混じって見えるのだ。学校のなかでのメインストリームからほど遠く、ネクラでさえない存在だった僕が共感し、ほくそ笑んでいたのが『ごっつ』のコントである。僕と同じことを思っていた男子中学生は少なくなかったはずだ。

『ごっつ』のコントはリアルタイムで見る分には腹を抱えて笑うほどにおかしい。しかし、コントの終わり際や、番組が終わってから思い出す時には、きまって哀しさや切なさがこみ上げてくるのだ。具体的なコント名を挙げると、「トカゲのおっさん」「こんにさわ!園長先生」「産卵」「しょうた!」「スキマ男」「辻武司」「豆」「やすしくん」など。今では地上波で放送できない内容ばかりだが、もし機会があれば是非見てほしい。笑うということは本来楽しいものではあるが、笑われるということはけして楽しいことではなく、哀しかったり切なかったりするものである。それでもなお、笑われることによって救われることもあるのだ、と気付かせてくれる。子どもに見せたくない番組と言われなにかと嫌われる番組であったが、見せたくない部分にこそ、本質的なものがあったのだと思う。

そしてこの時期だからこそ、あのコントを紹介しないわけにはいかない。今から20年前にダウンタウンが自ら演じた「2014」というコントである。20年後、50代になり売れない芸人になったダウンタウン(ハゲヅラをかぶり老人に見せるメイクをしている)が、マネージャーに金をせびったり仕事を要求したりする姿を演じる、という内容のコントである。未来の自分たちをコントの題材にするという何という自信の強さを、当時31歳のダウンタウンは既に持ち得ていたのだ。今の30代前半の芸人で、あの当時のダウンタウンの半分でも存在感、世界観を出せる芸人はいるだろうか。そう考えると、ダウンタウンの凄さを改めて感じさせられる。そしてあのコントを演じてから20年が経ち、2014年現実に51歳にならんとしているダウンタウンの現在の姿を見るにつけ、深い感慨を覚えずにはいられない。