歯の治療とバイクのメンテナンス。

以前歯科に通っていると言うエントリを書いた。その後も引き続き通っていて、前回からようやく虫歯の治療に入っている。きょうはついに長年放置していた左上部の虫歯の治療を受けた。麻酔をしてぱっくりと歯を空けてみると、何年も密閉されていたかのような空間が姿を現し、そこから滞留していた空気が漏れだし、臭いが鼻を衝いた。歯科医の先生は丁寧にその部分を取り除き、クリーニングしていく。こと歯科に関しては、歯科医と患者の相性が非常に大切だと思うのだが、いま処置してもらっている先生との相性は抜群にいい。

歯の治療を終えて、ロードバイクのメンテナンスをする。チェーンに錆びが入りはじめている。錆びを入れてしまうのは自転車乗りとして恥ずかしい。ブラシで念入りにこすりながら、錆びと汚れを落としていく。タイヤも摩耗が進んでいるので、年内くらいには換えなければならないかもしれない。雨上がりの湿った空気の下で自転車をいじっていると、夏の夕暮れ時に実家の前に並ぶ植木鉢に水を遣ったり、打ち水をしたことを思い出す。向かいの平屋建てに住む家の子どもが、昨夜家の前で花火をしていた跡が残っている。

★★★

先日、日本を代表するようなものつくり企業数社の方々とミーティングをする機会があった。いつも会う人と言えば金融機関か中小企業の人たちばかりなので、僕にとってはすごく新鮮な機会なのだ。ものつくりに携わる人から新たな気付きを受け取ることが多い。

日本を象徴する企業が次々と崩壊することで、日本人の価値観は大きく変わり、日本は新しいパラダイムに突入する、という主張を何年か前に聞いた。昨年から顕著になった大手家電メーカーの苦闘は、「日本を象徴する企業の崩壊」を意味しているだろうか。パナソニックは一足先に大がかりなリストラと体制刷新に動いた。ソニーも経営体制をリフレッシュしているがその効果は未知数だ。シャープは今まさに決断を迫られている。すんでのところで崩壊は回避されたように見えるが、3社ともに、ぎりぎりになるまで歯医者に行かずに我慢したり、人から指摘されるまでバイクのメンテナンスをしなかった僕の姿がダブって見える。もっと早く対処したり、日頃からこまめにカイゼンするように気を付けていれば、ここまでひどくはならなかったのではないだろうか、という教訓である。人も企業も、なんとか表面を繕いながらうまくやれているうちは、抜本的に手を入れることに対して及び腰になりがちである。JALがこれだけ鮮やかに業績回復をなし得たのは、いったん法的整理に持ち込んだことで、過去のしがらみを一気に断ち切ることができたからに他ならないだろう。

そして今この国でもっとも表面的な取り繕いに終始して本質的な問題の先送りをしているのは、社会保障システムだと思う。公的年金システムは、今の積立金残高から考えて間違いなく10〜20年の間に破綻する。既に年金受給を開始している世代を含めて、もうほとんどの人が逃げ切れない問題になっている。無策のまま破綻にまで突っ込むのか、それとも大幅な痛みを伴いながらもこのシステムを継続していくのか、詰め物をした歯とキレイになったバイクを見ながらどうしたものかと考える。