20年ぶりの5打席敬遠に思う。

毎年7月限定で、僕は高校野球マニアになる。

小さい頃から、地理好き&野球好きだった僕は、この時期になるときまってスポーツ欄の下段を埋め尽くす、各都道府県予選の結果を隅々まで読むことが好きだった。連なる高校の名前には、しばしば今までに聞いたことのない地名が乗っかっていて、見知らぬ土地への興味をくすぐるのだ。その趣味は今でも変わらなくて、この時期は各地区の予選の経過を把握していく作業に、毎日30分〜1時間くらい没頭してしまい、寝不足になる。僕にとって、49代表が1校に絞られていく甲子園大会は余興のようなもので、4000を超える高校が一気に絞られていく予選の経過を追うほうがはるかにワクワクするのだ。長年予選の経過を追っていると、毎年なんとなく気になる高校が出てきて、自然とその高校を応援していたりもする。昔は伝統校と呼ばれた高校が勝てなくなってきたり、創部間もない高校が快進撃を遂げたり、公立高校が私学の壁を打ち破ったり、いろんな流れが見えてきて本当に面白い。

ちなみに今年の予選の経過を追っていて、コールドゲームが以前に比べてかなり減ってきていると感じる。強豪校と普通の高校のレベルの差が縮まってきているように思う。有望な中学生が、比較的甲子園に出易い東北や山陰の県の高校に進む、いわゆる野球留学が一時期に比べて減ったことや、あえて強豪校に進まずに地元の高校に進む、といったケースが増えてきていることが一因なのではないかと勝手に想像している。

★★★

高校野球といえば有名なのが、1992年の松井秀喜5打席連続敬遠である。野球にあまり興味のない人であっても、このエピソードは覚えていると思う。敬遠を実施した明徳義塾高校と、監督の馬淵史郎に賛否両論が集まった。

そして20年の時を経て、きょうの高知県予選決勝でも同じことが起こされた。高知高校4番バッターの法兼君は、準々決勝、準決勝と2試合連続のホームランを放ち、チームを決勝まで引っ張ってきた。この強打者に対して、明徳義塾高校の投手は、6打席全てで勝負を避けた。結果は5四球、2打席目は外した球を強引に振って安打にした。試合は延長12回裏に明徳義塾高校が1点を挙げて、2×-1でのサヨナラ勝ちで、甲子園への切符を掴んだ。優勝インタビューでは罵声がとんでいたそうだ。敬遠策を指示した監督は、馬淵史郎である。

個人的には、敬遠も作戦であり、非難されるべきものではないと思っている。明徳義塾高校の投手にしても、20年前のエピソードと大騒動が頭にあるなかで、監督の指示を貫いて投げぬき、よく勝ったと思う。今回の一件がこれからどれだけ騒動になるかはわからないが、今年の夏の甲子園も、いろいろ考えさせられることになるのだろう、と思っている。