順風に乗るか、逆風に立ち向かうか。

久しぶりに人と会って、その人の性格や振る舞いがずいぶん変わっていて驚く、ということがたまにある。基本的に、人はその時々の環境や周りにいる人たちに影響を受けることが多い。社風に染まる、という言葉もあるし、付き合う友達や、長年連れ添った夫婦が似てくる、というのはこういうことなのだろう。そもそも、この世に生まれてきた赤ちゃんは、育ての親の性格や振る舞いから大きな影響を受けて、自らの最初の価値観を創り上げるのだと思う。

このことを逆手にとって、自分が進むべき道を選んでいくことは、すごく有用だと思う。自分を成長させたい、と思えば、成長意欲の強い人たちの集団に飛び込んでいくことが一番の近道だ。やる気のない人たちに囲まれたなかで自分を律して努力を続けるのにはかなりの精神力が必要になるだろう。前向きな人たちに囲まれて過ごせば、自分自身の考え方もどんどん前向きに引っ張られていく。つまらない人たちに流されて過ごせば、自分自身もつまらない人間になっていくはずだ。

しかしながら、生きていくなかでは、自分が今いる環境や周りにいる人たちと、どうしても価値観が合わない場面が必ず出てくる。そんな時にはどうすればいいだろうか。

まず、環境や付き合う人を変える、という選択肢があると思う。しかしながら一方で、価値観が違うからと言っておいそれと、所属する組織を転々としていくわけにもいかないことだってある。

次に、自分自身の考え方を周りに合わせていく、という選択肢があると思う。先に述べたように、最初は感じていた違和感も、だんだんと薄れていくはずだ。理不尽なことも、自分自身のなかで折り合いを付けていくのだ。

最後に、環境や付き合う人は変えずに、その価値観を受け取らない、という選択肢もあると思う。これは見た目上は周りに合わせていく選択肢とあまり変わらないのだが、自分自身の奥底に持つ考え方をけしてブレさせることないように注意を払い続けるのだ。長い期間にわたってこうした努力を続けることで、自分自身の価値観がより強固なものになっていくのではないかと僕は考えている。

似たような価値観の人たちに囲まれて過ごしていれば、自分の価値観を保つべく努力することもあまりないだろうし、何よりもラクに日々を過ごすことができる。そのような環境に身をおいてこそぐんと能力を伸ばす人もいるだろう。しかしながら、逆風のような環境でこそ研ぎ澄まされる価値観があり、その価値観を土台にして身に付けられる能力があると思う。