パラダイムシフト。

一事が万事そうだと言うつもりもないのだが、公的なセクションの人と仕事でやりとりをするようなことがあると、次のような言葉を投げかけられることが多い。

『そのようなことは前例がないので、応じかねます』

この言葉を受け取る度に、この言葉を言わざるを得なかった電話口の向こうの人に、向こう側に横たわっている組織の論理に、ため息が出てしまう。前例がないからできない、と言って道理が通ったのは、果たしていつの時代までだったのだろうか。その善悪は別にしても、既に多くの民間企業では、前例通りにこなせばいいような仕事は非正社員に置き換えられたり、コンピュータに任せられたり、製造業ではロボットに置き換えられたりしている。コンピュータやロボットのない時代には、前例通りにものごとをこなすことのできる人材は確かに貴重だったとは思う。しかしながら、時代は変わった。前例通りにこなせばいいような仕事について、ドラステッィクに外部に委託したり、機械に置き換えたりしている企業や国家こそが、競争優位に立っているのは明らかである。

サービス業でも、マニュアルに従った対応を抜け出して、サービスの前線に立つ個々人が自分達の判断で、個性を持って柔軟に対応する企業が、これからは競争優位に立っていくように思う。経験としての前例の蓄積は有用ではあるが、前例に縛られず、常に臨機応変に、ベストの対応を追及していく考え方が、その必要性をますます増していくだろう。(当然、なにがベストと考えるのか、というプリンシパルはある。ディズニーやマクドナルドの人材育成は既に有名だ)

このようなパラダイムシフトは既にかなり浸透しつつあるように見える。そして世の中の仕事は、このパラダイムシフトに対応できているか否かで、随分と成果に差がつくような内容に急速に変わってきている。自分の仕事について、なぜ成功したか、なぜ失敗したか、どのような方法を採ればより成果をあげられることができたか、できるだけ客観的に振り返って検証する能力が求められている。振り返りがあってこそ、未来に向けて改善することができるし、自分自身の視野を拡げることができるのだと思う。どうしたら、この能力が身に付くのか、というのは僕も未だによくわからないし(知識の蓄えだけでは身に付かないようには思う)、人のことなんて言ってられないくらいに僕自身まだまだ全然この能力が足りない。固定観念からできるだけ離れてものごとを考えるのが僕はたいそう苦手なので、それだけはいつも意識しておきたいとは思っている。