仕事でちょくちょく溜池山王に行くことがある。少し時間があったので、路地裏を散歩してみた。
溜池山王は2007年の夏から2013年の秋まで働いていた場所だ。既に3年半の時間が過ぎて、街は大きく変わろうとしているが、細い路地裏にはあの頃と変わらない風景が残っている。ひとつひとつの道ばたやお店に、まるで落とし物のように思い出が転がっていて、あの頃抱えていた感情や、隣にいた人の顔が浮かんでくる。
昔手がけた仕事の経験がいまの自分のキャリアをそれなりに支えているのと同じように、昔の思い出がいまの自分の感情の拠りどころになっているのだと思う。綺麗さっぱり忘れてしまうにはもったいない思い出ばかりだ。ふとした拍子に、あの頃の自分のように不安そうな顔をした若者が曲がり角の向こうからふらふらと歩いてくるような気がする。
自分の脳だけで昔のことを思い出すのは難しくて、思い出の場所に赴くことではじめて、場所に紐づいた記憶が蘇ってくることがある。