将棋棋士の二極分化。

普段テレビはそんなに見ないのだが、日曜日の午前中は必ずEテレの将棋番組を見ている(よってうちでは日曜日の朝はチャンネルの取り合いになる)。番組を見ながらついついtwitterでどうでもいいことをつぶやいてしまう。

放映されているNHK杯テレビ将棋トーナメントは、シードされた上位クラスの棋士及び前年度成績優秀者の31名と、120人前後いる残りの棋士のなかから予選を勝ち抜いた18名の棋士、女流代表の1名を加えた50名で行われるトーナメント戦である。上位クラスの棋士は、他の棋戦でも目にする事が多いのだが、予選を勝ち上がってきた棋士などは、名前は知っていても顔をみるのは初めて、という人もいる。そんな風にメディア露出がレアな棋士たちが話したり対局する姿を見られるのが、この番組の醍醐味と言ってもいい。先週の対局でも現在最年少棋士である現役高校生の阿部光瑠四段が出演し、見事勝ち抜いていた。彼は早指しの将棋を非常に得意としており(昨年末に森内俊之名人にも勝っている)、どこまで勝ち抜くのか楽しみにしている。

やっと本題に入る。きょうの対局は佐藤伸哉六段vs豊島将之七段戦だったのだが、佐藤六段がカツラをかぶって出演していたことで、かなりその界隈では話題となっていた。対局前インタビューもニコニコ動画youtubeでもupされており、対局中劣勢になったところでも、これは顔芸じゃないかと思わざるを得ない表情、しかもNHK側もその顔をわざとアップで放映していたように思える。NHKはホントこのあたり、視聴者の期待を裏切らない。豊島七段は昨年弱冠20歳にして王将位へのタイトル挑戦を果たし、若手のなかでは一番将来の名人位に近いと言える正統派の実力者(個人的に、「三月のライオン」桐山くんのモデルだと思っている)であるだけに、対戦相手の佐藤六段がヅラをかぶって対局に臨んでいることに内心怒っているのではないかとヒヤヒヤしながら見ていた。対局内容は豊島七段が実力差の通りの完勝だった。

はっきり言って、佐藤六段のきょうの将棋の内容ではプロとしてカネは取れない。しかしながら、佐藤六段は諸々のイベントでの露出機会が多く、イベントでもカツラ着用で登場→途中で外して場内を沸かせたり、スベリ芸・自虐ネタではあるが喋りも上手い。イベントや将棋教室を通じて将棋自体の普及に大きく貢献していると言っていい。

今までも、普及活動に力を入れる棋士はいたが、今後将棋棋士は、将棋の内容そのものでファンを魅せる棋士と、普及面での活動を本業にしていく棋士とに大きく二分されていくだろう(能力の高い棋士は両立もできるだろうし、逆に将棋も弱く普及活動にも熱心でない棋士の存在意義は薄くなっていくのかもしれない)。今の将棋界はニコニコ動画とのタイアップも進んでいるし、将棋教室は小学生の習い事のひとつとしての地位を確立した。普及活動でメシを食っていくことも昔よりはたやすくなっている。そんな業界の行く末を感じさせる、きょうの対局だった。