肝心かなめの夜はまだ!

20年と少し大阪市民だったので、やはり昨日の選挙は気になった。

大阪に住む大半の人にとって、政治とは彼方の世界のできごとだった。もともと商人の町だったからなのか、いつしか政治に期待すること誰もが諦めてしまったのか、それを象徴するかのように、市長選の投票率は20〜30%にとどまっていた。特に20代の投票率は常に10%台であった。それゆえに、政治は少数の人たちのものであった。

今回投票率が60%を越え、大阪維新の会の擁立する候補が圧勝した。大阪を覆う閉塞感のなかで橋下徹ならなにかを変えてくれると誰もが感じたのか、強大なリーダーシップに従えばきっと安心だという逃避的欲求が働いたのか。現職の平松邦夫の得票数は4年前の市長選挙と比べても13万票以上積み増しているのだが、橋下徹はそこからさらに25万票以上の票を獲得した。これまで政治を彼方の世界だと感じていた人たち、特に若者世代が投票に向かった結果である。既存の政党が軒並み集結し、日教組・労組その他既得権益層が束になってもこれだけの差を付けられた。敗戦の弁を述べる平松氏を見ていて、この人が一番の被害者なのかもしれないな、と同情を禁じえなかった。平松氏の進めてきた市政についてそこまでよくは知らないが、よってたかって各団体が相乗り支援を行い、橋下バッシングを行う姿は醜悪で、平松氏のイメージを貶めてしまったのではないか。平松陣営にそこまで頭の働くブレーンがいなかったのか、まんまと橋下陣営の術中にはまってしまったと思う。今回の選挙は政策どうこうよりもそこ(戦術のマズさ)に尽きると思う。

橋下氏は当選後、3時間にも及ぶ記者会見を行った。あからさまに反橋下の動きを見せた大阪市職員に対して「彼らも自らの判断で去るということくらいはやってくれると思います」とバッサリ言ったりもしていたし、やたら「民意」という言葉を多用していたのは不安ではあるが、会見の大半は落ち着いた、浮ついたところのないものだった。今さらどうこう言ってもしょうがないのでこれからの橋下氏に期待するしかない。

一部の大阪市職員がどうしようもないくらい腐っているとも思うし、大阪市職員に限らず既得権者を叩くのは痛快だとも思う。ただ、それだけでは何の解決にもなっていない。「民意」すなわちそれぞれの心に潜むそんな気持ちとうまく折り合いをつけて、これからの大阪のなりゆきをよく観察していきたいと思う。