アルタ前と大阪市と。

笑っていいとも!」を見たのは10年ぶりくらいだったか。麗らかな春分の日、安倍首相が出るというのでテレビのスイッチを入れてみた。見慣れたコーナーや真新しいコーナーを挟み、テレフォンショッキングのコーナーへ。満を持して首相が登場してきた。バラエティ番組だからか、いつもと比べるとラフな格好をしている。タモリのリードも素晴らしいものがあるが、トークも堅くなく、かと言って必要以上に砕けたものでもなく、落ち着いてコントロールされたものだった。個人的には、弱っていた時にボキャブラを見て元気が出た、という下りは人間臭さに溢れていてよかった(首相だって、政治家だって人間なのだ)し、この言葉はタモリへの、お笑い界への大きな賛辞になったはずだ。少なくとも、民主党政権時代の3人の首相はこういう場には出て来れなかっただろうし、こういうふるまいを安心して見ていられるのは小泉元首相以来ではないだろうか。

非常に和やかなスタジオ内の空気とは対照的に、アルタ前ではデモが行われていたということだ。どういう人たちがどういう意図で首相批判を繰り広げようとしたのかはなんとも判りかねるが、彼らがデモで主張したかったことは、その日新宿の雑踏にいた人たちにどう届いただろうか。周りの人たちに共感されるようなデモだっただろうか。またデモを報じたネットニュースなどを読んだ人の反応はいかばかりだったろうか。

★★★

一方日曜日には出直し大阪市長選挙が行われだ。主要政党が全く対抗馬を立てず白けムードが漂った末に、23%台の低投票率に終わった。さらに投票の約2割が白票だったという。得票総数で見ても、橋下氏の得票数は前回市長選の半分にとどまった。結果的に橋下氏は圧勝した(もっとも圧勝することは選挙をする前から明らかだったが)が、有権者の半数もしくはそれに近い票を得て再選するという目論見は全く外れてしまった。ここまで得票数が伸びなかったのは計算外だったのではなかろうか。橋下氏は投票率と得票数が伸びなかった原因がメディアが故意に選挙の話題を取り上げなかったことにあることをさかんに主張しているが、ひいき目に見ても今回の選挙戦の構図はメディアで取り上げづらい。そのような構図を作って選挙に踏み切ったのは橋下氏自身であり、それでもメディアを批判するというのはお門違いではなかろうか。

そもそも、橋下氏と維新の会のここ数年の躍進はメディアの力を借りたものである。見方によっては、今回の得票数は維新の会の現状の地力とも言える。メディアに頼らず地道なタウンミーティングなども積み重ねているようだが、支持を拡げていくというのは一朝一夕にはできるものではないし、トップの勝手な言動やメディアとの対立によってたやすく崩れてしまいかねないものだと思う。そういう意味では、このままの路線を続けてもジリ貧に陥ることは目に見えている。

2つの話はなんだか似ているように思う。