29歳。

おととい、お陰さまで無事に29歳の誕生日を迎えました。僕は14時45分ごろに生まれ出でてきたそうなんですが、毎年誕生日のその時間になると、目を閉じて、産声をあげて生まれてくる自分の姿を想像します。先日の同窓会のテーマでもあった「手前みそ(三十)」に一歩近づきました。

10年前の誕生日に、大学の友人たちみんなからタケオキクチの財布をプレゼントしてもらいました。その二ヶ月ほど前、夏休みが終わって大阪からつくばに帰る道すがら、取手駅のベンチに財布を置き忘れたまま土浦行きの電車に乗ってしまい、財布をなくしてしまいました。友人の使わなくなった財布をもらって代わりに使っていたところを、みなにプレゼントしてもらいました。

その財布はいつも僕の左右のポケットのどちらかに入っていて、汗やら雨やらで、もう随分と前から、もともとの薄いブラウンの色でなくて、焦げ茶色と言ってもいいくらいの、限りなく濃いブラウンに色を変えていました。革の表面には、まるで皺のような無数のひび割れが刻まれています。

ちょっとセンチメンタルな言い方をすると、この10年の間、いつも一緒にいました。いいことも悪いことも、全て見られていました。普段ひとつのものを使い続けることはあまりないので、こう書いてしまうと情が移ってしまいそうなのですが、10年を一区切りにして、役目を終えます。

★★★

いま、最終近い東北新幹線で東京に戻るところ。今回は震災後初めて相馬へ。今の仕事を担当してから、前にもましてずけずけとものを言わずにはいられない性格が強まってきたけれど、きょうは上席と一緒に交渉にいったこともあって、普段の自分に比べてかなり気持ちをセーブした。

自分が正しいと思うことをストレートに相手に指摘することをこれまで是としてきたし、これからもそのスタンスでいたいとは思う。ストレートにものを言いながらも、基本的な姿勢は柔らかい(と自分では思っている)のでバランスがとれていると自分で思っていたが、改めて他の人の姿を見ると、もう少し自分のスタンスの幅を広げることも必要かなと思ったりもする。

仕事においても、28歳と29歳は大きく違うように思う。自分の担当の仕事を好きなようにやっていられた時代は去っていく。自分の好きなようにやりたければ独立したほうがいいと思う。どうありたいかは、まだ迷っている。