TPPの反対理由がよくわからない。
メディアで毎日TPPの話をしている。米国などから参加を迫られているというニュアンスの報道もよく聞くが、実のところ米国ではTPPなどほとんど議論にも上がっていないというのが何とも面白い。米国は自国の景気(というか雇用)の落ち込みの立て直しに必死なのだ。ユニクロがNYに旗艦店舗を進出させた時に、公的セクターの関係者が開店セレモニーに出席をして、「雇用をありがとう」と述べたくらいだ。Apple製品が世界中を席巻しているが、それ以外に世界で優位性を持つ米国企業を挙げるのは難しい。TPPを進めたからといって米国から輸入量が増えるのは農産物くらいだろう。TPPは環太平洋戦略的経済連携協定と言いながらもロシアや中国は参加していないし、米国以外の参加国は日本との貿易シェアはそこまで高くない。
なので、個人的にはTPPに参加しようがしまいがどっちでもいいと思っている(経済的な効用としてはそりゃあ参加した方がいいだろうが)のだが、気になるのは反対派の言い草である。米国の陰謀などと言っているのは論外として、各県のJAが断固として反対を唱えている。1100万人の署名が集まったという。専業農家や大規模経営を行っている農家はむしろTPPを市場拡大のチャンスと捉えているくらいだろうから、ほとんどは兼業農家なのだろうか。
ならばTPP参加を見送って、その先に日本の農業の成長戦略は描けるのだろうか。TPPに参加することで、確かにいくつかの農家は廃業を余儀なくされるのかもしれない。ただそれは、付加価値を生み出すことができなくなった製造業やサービス業の企業が消滅していくこととどれほどの違いがあるだろうか。農業には美しい国土を保持する価値もあると言えるかもしれないが、それならばなぜ減反などという非効率なことをしているのか。そもそもこれまでの政策による過剰な庇護が農業の競争力を弱めてきたのであって、農業をこれから日本の一大輸出産業に育ててみようかという気概が、TPP反対を唱えている人たちには全くないのだろうか。TPPの是非を問う前に、既にTPPを外敵とみなして受け身の姿勢になってしまっているのがそもそもの問題ではなかろうか。そんな姿勢では、TPP参加を見送ったところで日本の農業が衰退していくことには変わりない。
今回が、日本の農業がリスクを取って外に勝負を仕掛けていく、最後のチャンスなのだと思う。TPPによる実利はともかく、日本の各産業が世界に挑戦していく気概を持つきっかけとなる意味で、TPPがさかんにメディアで採りあげられるのはよいことだとは思う。