どうしようもなく苦手。

春の訪れはとてつもなく憂鬱である。

正確に言うと毎年春になると行われる健康診断のなかの採血が憂鬱である。それさえ終われば心の中はようやく本物の春が来た気分になる。花粉症なんてたいした問題ではない(僕は軽度の花粉症ではあるが)。僕の三大嫌いなものの残り二つである地震、絶叫マシンと比べても飛びぬけて苦手である。どれくらい苦手かと言うと、飲み会などで献血の話題になると気分が悪くなってその場から退席してしまうくらい苦手である。どうにかいい方法はないかと思ってWebで苦手を克服する方法を検索しようと思っても、そのブラウザを読む前に閉じたくなるくらい苦手である。この文章ですら青ざめながら書いている(書かなきゃいいのに)仕事が忙しかろうがこの時期は頭から消えることはない。

血液を抜かれることも好きではないが、それ以上にあの場所から抜かれるというのが耐えられない。多少痛くてもいいからお尻とかから抜いてほしいと思う。それはそれで滑稽な図だが。あと、無駄にプライドがあるので横になって受けるのは恥ずかしいと思ってしまう。

幸いにして倒れたことはないので、たぶん本当に体質的に苦手なのではなくて要は気の持ちようなのだが、いつまで経っても克服できない。食べ物の好き嫌いのように大人になるにつれてなくなっていくわけではないようだ。そもそも何をきっかけにして苦手になったのやろう。そして何をきっかけにして苦手でなくなるのやろうか。

自分で言うのもなんだが普段の僕はけっこうものごとを前向きに捉えることが多かったり、慎重に行動すべき場面でも思い切り良く踏み込んだり(しばしば自爆したり)ということが多いのだが、例えば山に登るときの行動とか、採血だとか、自分の身体の危険(おおげさ!)にかかわることに対しては臆病になることが多い。心がダメージを受けるようなこともたまにはあるが、その時はたいてい潰れてしまうのではなくてなにくそという気持ちが湧き上がってくる。恐らくは、自分の心をコントロールするよりも、自分の身体をコントロールする方が苦手なんだと思う。