昼と夜。

朝早くに家を出ようとして、既に外が白み始めていることに気付いた。季節が進んで夜明けが早くなっている。冬の間は早く家を出ようとすると、外はきまって暗闇に包まれていたので、多少の違和感がある。

一年がひと巡りするなかで、太陽は律儀に少しずつずれて空に顔を現す。こちらの気分とは関係なく、これからの季節はどんどん昼間が長くなっていく。以前の僕はこれからの季節が憂鬱だった。春特有のぼんやりした空気(ここ10年くらいは多分に花粉症も原因のひとつだ)と、ようやく慣れた環境から引き離されて新しいところに放り込まれることへの漠然とした不安がない交ぜになって、昼間が夜を侵食していくことに言いようのない嫌悪すら感じていた。よく言う五月病も、この類のものではないだろうか。暑さは苦手ではないのだが、精神的には夏も得意ではなかった。いつも、指折り数えて8月が終わるのを待ちわびていた。夏が終わってどんどん日暮れが早くなっていくと、居心地の良い場所が帰ってきたようで、僕の心はほっとした気持ちで満たされる。学校を卒業して、4月というタイミングがあまり意味を持たなくなった今なお、その感覚は残っている。