名月。

土曜の夜は中秋の名月であった。中華圏などでは中秋節としてお祝いがされて、月餅などを食べたこともある。今年の中秋の名月は、カラッとした晴天で、くっきりと月の姿を拝むことができた。

 

満月を見上げると、それまでに過ごしてきた年月を自動的に思い起こすようになって、はや21年になる。初めて月を意識したのは、親元を離れて大学でひとり暮らしを始めて、新歓イベントかなにかの帰り道、いよいよ1人での生活が始まるんだなあ、という万感の思いで見上げた時に浮かんでいた月である。18歳という年齢になり、子どもから大人にならなければならない、自分で自分に責任を持って生きていかねばならない、その自覚をもって過ごす時間の流れ方は、子ども時代のそれとは違ったものになるんだ、という思いが自分の心の中に芽生えて、これから始まる途方もない旅路に武者震いした記憶は、今でも胸に残っている。

 

月の満ち欠けが一巡するのを一区切りとして、まずは目の前の1ヶ月弱を乗り切ることだけを考えて、刻んでいこう、と思ったのもこの時である。予見された未来でなく、何があるかわからなくとも、その不確実性を受け止めて、むしろ楽しんでいく。その気持ちは、今も全く変わっていない。