成熟。

日本がどんどん中国に買い負けている、という話を聞く。いまや上級食材は国内では消費されずに輸出にまわっている。もはや購買力では先進国と呼べなくなっているのだろうし、一般ピープルの生活は中進国のそれに近づいていると言ってもいい。


とはいえ、日本は果たして以前から先進国だったのだろうか、という思いもある。まだかすかに記憶の残る昭和末期、そこらじゅうで大人たちはタバコをスパスパ吸っていたし、公共の場はトイレのみならずどこも汚かった。経済力だけでみれば世界第2位だったのかもしれないが、人間の成熟度でいえば非常に低いものだったのだと思う。


購買力で負けているのは忸怩たる思いはあるが、この30年の社会の変化だけみても、経済力が全てを癒す、という世界でもなくなってきている。徐々に貧困が削減され、所得の高低にかかわらず一定レベルの生活を誰もが送れるようになってきている世界で、人生にとって大切なものは何なのか、ということがもっと問い直されていく時代になっていくはずだ。