ラバウル小唄。

今一番興味のある国はどこか、と聞かれるとパプアニューギニアになる。いろんな意味でこの国はブレイクする前夜にあると言える。

まずは、政治経済面から。現在三菱商事新日本石油国際協力銀行によって天然ガス採掘のプロジェクトが始まっている。稼働予定の天然ガスプラントは世界最大規模のものであり、日本にとって天然ガス調達先の多様化という意味で注目すべき存在となる。そして、今後天然ガスの輸出が本格化すれば、数年のうちにパプアニューギニアニュージーランドを抜いてオセアニア第二の経済規模を擁する国家になることが予想されているという(パプアニューギニアインドネシアと地続きにあるが、38年前まではオーストラリアの信託統治を受けていたこともあり、地域としてはアジアというよりはオセアニアとして区分されるのが妥当だ)。例によって中国人の進出も相次いでおり、移民増加による現地住民とのトラブルも起こっているが、全体的には経済発展に伴い国内の治安は落ち着きつつある。中国人の進出についてはパプアニューギニア自身だけではなく、オーストラリアなども多いに警戒している。そのような経緯もあって、日本が確かなプレゼンスを発揮することが求められているとも言える。地政学的な観点からもパプアニューギニアは重要な位置を占めている。

★★★

地政学的に重要であったのは、昔からのことである。太平洋戦争において、日本の南方戦線と言えばほぼパプアニューギニアのことを指していた。なかでもラバウルは10万人近くの日本軍が滞在していたことで有名である。漫画家の水木しげるが壮絶な戦争体験を味わったのもラバウルの地でのことである。

ラバウルでは今も日本軍の戦闘機などの残骸が残っているが、これとあわせて有名なのがラバウルの火山と温泉である。ラバウルの一体は火山が多く、古くは西暦536年に大噴火がおこっている(4500キロ以上離れた南京でも噴火の記録が残されている)。この噴火に伴う全世界的な寒冷化が世界人口の激減につながり、世界の歴史を大きく狂わせたことは興味深い。わずか19年前にも規模の大きな噴火が発生し、ラバウルの街の半分が火山灰に埋まっている。このような地形であることから至る所に熱い温泉が湧き出ており、ラバウル近隣の海のほとんどが入浴に適した温度にまで温められている。戦時中の日本兵も入浴したという。温泉好きとしては、ぜひ一度現地を訪れて、歴史に思いを馳せながら湯に浸かってみたいと思う。