空と僕とのあいだには。

ひょんなことからルーフトップバーに行った。仕事の一環なのでお酒を飲んだわけではない。冬の空は晴れ渡っていて、着陸態勢に入った飛行機が目の前を降下していく。


透明なアクリル板が大人の頭の高さくらいまで立てられているとはいえ、縁のところに立つと怖い。自分自身が高所恐怖症だったことに久しぶりに気付かされる。いまこの状況で大地震がきたらどうしよう、空に放り出されて地面に叩きつけられるのかな、なんて想像をしてしまう。


いつしか、後ずさりをして壁にくっついてしまう。なにかあったらすぐに階段にかけよって階下におりようと心のなかではスタンバイしている。こういうシチュエーションを楽しめないなんて我ながら情けない奴よなあ、と思う。


よく昔は山に登っていたよなあ、と思い出す。登山靴はここ6年では2度ほどしか脚を入れていない。滑落もしたし、遭難しかけたこともある。いまはあんな冒険じみたことはできないな、と思う。またいつかチャレンジする日がするのかもしれないけれども。


エレベーターの階数表示が1に近づいていくのを見つめ、心のなかにじんわりと安堵感が滲み出してくるのを噛みしめる。