月見蕎麦。

久しぶりに蕎麦屋に入った。創業166年の歴史ある店らしい。蕎麦屋に入るといつも月見そばを頼んでしまう。たいていの店は天ぷらが油っこいし、油を吸ったお箸をそばの丼に浸すと、じわっと油がつゆの水面に広がるのがどうも好きになれない(同じ理由で天ぷらそばやきつねそばもあまり好かない)のだ。


卵もくずれたらつゆの色が変わってしまうじゃないか、と言われそうだが、僕の癖として卵は最後まで潰さないでとっておくのである。


まずは、まじりけのないつゆとそばを堪能する。大阪生まれなのに、うどんかそばかと選ぶ場面ではほぼそばを選んでしまう。もともと粉ものはそんなに好きでもないのかもしれない。さらに言うと、コシのあまり強くないふにゃふにゃのそばの方が好きだ。飲みもののようにするっと入っていくくらいが良い。


麺も全て食べて、つゆも半分以上飲んでから、卵をそのまま口で呑み込む。そうしてつゆを飲み込んで口の中で卵をつぶす。こうするとそれほど他に具のないそばでも、なんだかお腹にたまる感じがして、ああ一食ちゃんと食べたなあと思えるのである。