大人物。

中曽根元首相が亡くなられ、改めて昭和史に思いを巡らせる機会となった。思えば戦後の歴代総理は、ずっと戦後処理と向き合ってきたのである。21世紀に入ってからはその色合いもだんだん薄くなってきたが、いよいよ第二次安倍政権に至って、戦後レジームからの脱却を目指しているなかでのこの訃報は、なんだか運命的なものを感じる。


いまもなお日々右翼と左翼の綱引きは続いているが、それぞれの思想主義は、もともとの源流からはずいぶん離れたところにきていて、骨のない主張になってしまったと思う。政治の世界の人たちも、大人物がいなくなってしまった。それだけ、政治が持つ権力は絶対的なものでもなくなり、なおかつ市民の厳しい監視の目にさらされ、裁量が効かなくなってきたのだろう。裏を返せば、平和な日々が続いているということでもある。


再び、国家が危機的状況に陥り乱世になれば、政治の世界に大物が出てくることもあるのだろうか。そう思うと、政治の世界を大物じゃなくとも回せているくらいが、いちばんよい世界なのかもしれない。