大船渡。

大船渡には10年近く前に仕事で足を伸ばしたことがある。東日本大震災よりも前の話だ。一ノ関からバスに揺られてたどり着いた港町にはのんびりとした時間が流れていた。


この町が今年の春から秋にかけてざわめきに包まれた。その主役は、ドラフト会議の結果を見つめながら、強張った表情で記者の質問に答えていた。とても未来への希望に満ち溢れた顔ではなかった。


マリーンズは今年も、驚異的なくじ運で交渉権を引き当てた。ファンとしてそれは嬉しいのだけど、果たしてこれだけの逸材の未来を、くじ引きのような残酷な、前時代的な形で決めてよいものか、という違和感が残った。


恐らくは、入団してくれるのだろう。そうであるからには、全力で育てあげなければならない。マリーンズという球団の存亡をかけて、この逸材を羽ばたかせることが義務付けられている。そうでないと、この青年を育んだ大船渡の町にも申し訳が立たない。