アワビ。

ふだん行くことのない四国へ。気温は高いもののカラッとしていて過ごしやすい。風が強く吹いていて、ここ数日の悩みが吹き飛んでしまったような心持ちになった。

仕事を終えてまた大阪に戻る。途中で淡路島に立ち寄ってもう一件面談をこなし、せっかくなので食事をして帰ることにする。

海沿いのレストランに入る。海鮮バーベキューをやっているらしい。海岸に面したテーブルに通されると、貝類が出てきた。アワビがまだのそのそと動いている。

焼き台にアワビを乗せる。当然ながら熱いようで、アワビは貝殻の上でさかんに身体を動かす。なんだか見ていられないのだが、目を背けることもできない。これが干してある魚ならばなにも思わないのだが、もがきながら焼かれていく姿を見るのはツラい。

やがてアワビは大人しくなり、よく見るような小さくまとまった形になった。ほのかに焦げがついている。複雑な気持ちを抱きながらも、トングで皿に取る。さっきまで動いていた個体に、ナイフを入れる。身体にふくんでいたであろう緑の藻が吐き出された。

えいやっという気持ちで肉を口に運ぶ。肉だけでない、なにかを食べた気分になる。