まどろみ。

地方都市でお酒を飲んで、ほうほうのていで東京に戻る。帰りの電車はガラガラで、思わずカバンを枕に身体を横にしてしまった。ジャケットを頭からかぶって目を瞑る。横になって、心臓が座席のシートにくっついてはじめて、速い鼓動が続いていることに気付く。そうこうしているうちに意識は遠くなり、しばしの眠りに落ちる。

意識が戻ってくる。まだ電車は動いている。もう眠れなくて、でもなにもする気になれなくて、身体を起こして窓の外、暗闇の向こうを見つめている。

お酒を飲むと種々の感情が麻痺してしまう。だからこそ毎日痛飲してしまう人がいるのだろうし、お酒を飲まないことには眠ることのできない人もいるのだろう。ただ、そうしないとやり過ごせないものがあるというのは辛いことだ。

お酒を飲まないまま、とことん自分自身や過去と向き合うことは、心のエネルギーが要る。見なかったふりをして忘れられれば楽なのだろうが、結局のところそれは根本的な解決を見ない。

そんなことを、覚醒して酔いも醒めた頭でぐるぐると考えている。