遠里小野とオリオン座。

出張の道すがら、報告幕に『おりおの橋』と書かれた市営バスを見かけた。「おりおの」の文字はすぐに「遠里小野」と脳内変換され、昔の記憶が蘇った。

中学校1〜2年の頃、出席番号が隣同士だった子は「遠里小野」出身だった。どこか「オリオン座」に似たエキゾチックな雰囲気を持つその地名を冠した街はどんなたたずまいをしているのかと、子どもながらに想像していた。それからすぐに「おりおの」の響きは僕の思考からは消え去って、15年以上が過ぎていた。

出張から帰宅して、ベッドに横たわる。帰りの新幹線で後先を考えずに飲んだカフェラテが効いたせいか、なかなか寝つけない。寝返りをうちながらまどろみ、空が白み始めるのを待つ。夏の空が白み始める時間帯の世界は、それはもう静かで素敵な時間なのだが、たいていの場合、眠れずに迎えた朝か、睡眠不足のまま起こされた朝であるがゆえに、良い思い出であることは少ない。それでも、夏でもこの時間であれば東の空にオリオン座が見えることを思い出し、むくりと身体を起こす。

はるか昔からこの朝の瞬間まで、一本の糸のように時間が繋がっていることを実感する。