啓蟄。

5年ほど前に足しげく通った箱根に久しぶりに出張。その間遊びにも来ていなかった。3月の寒い平日だが、やはりというか訪日客が多い。そして時節柄若い学生もよく見かけた。

それでも昼下がりの箱根登山鉄道は空いている。運転席の後ろにかぶりつくことのできる席に座って車窓を眺める。このところの暖かさで雪は全てなくなり、茫洋とした野山の姿が広がる。

単線なので小田原に下っていく電車と何度も行き違う。そちらは立ち客も出るほどに混雑している。首都圏に戻るのか、それとも箱根湯本に宿を取っているのか。完全なオフシーズンでこうなのだから、気候が良くなればさらに大変な人出になるのだろう。

たどり着いた場所で話を伺う。箱根の旅館はいまやどこも満室と思っていたのだが、そこまでの状況ではないそうだ。大規模な旅館は好調だが、家族経営に近い小規模な旅館は設備更新し切れずジリ貧に陥っている。きれいにリノベーションして適切な広告戦略を打てば状況は好転するはずなのだが、その一手が打てないのはいまの観光需要を考えるともったいない話だ。そしてそのリスクを一緒にとることこそが金融に求められていることなのだが。

たっぷり話して、とっぷりと日も昏れたなか山を下りる。もどかしさを抱えるなんて久しくなかったことに自分自身気づく。