リビング。

とある人のオフィスに伺った。オフィスといっても築古マンションの1室である。さすがにマンションの一室といってもオフィス仕様なので生活感はないのだが、閉め切られた扉の向こうはおそらく寝泊まりできるようになっているのだろう。ちらっと垣間見えた先には、テレビとリビングセットがあり、民放が流されていた。仕事中にテレビに接するといまでもなお、現実に引き戻されるような感覚になる。


応接スペースで仕事の話をひとしきり終えると、リビングから猫が出てきた。どうも、オーナーがマンションの階段でうずくまっていたのを保護した猫らしい。いまではこの部屋がすっかり居場所になって、思いのままに動き回りテーブルの上で寝そべったりする。猫はとんと飼ったこともないのだが、なかなかに賢くて、飼いたくなる人の気持ちもよくわかる。


そうこうしていると、宅配のうな重が届き、缶ビールをあけてもろとも流し込む。不思議な感覚で、とっぷりと昏れた街をとぼとぼと歩き、都心を挟んで反対側の自宅まで、長いこと電車に揺られて帰る。